テキトウ組織論・KYチーム開発

KYなPMが組織論とかチーム開発とか頑張ってるログ(WIP)

ボビーフィッシャーとジョッシュウェイツキンを探してその2(太極拳の話)

ジョッシュウェイツキンの「習得への情熱 チェスから武術へ――上達するための、僕の意識的学習法」の話

前回書いた記事の続き的な記事です。

読書ログの後編的な。

負の投資

とても興味深い要素として、「負の投資」というものが書かれていました。

これはジョッシュの太極拳の師匠(?)のウィリアム・C・C・チェンの言葉で、

成長するためには、今持っている考えを捨てる必要がある。いずれ勝てるようになるために、今は負けなければならない。

と書いてありました。

この本では太極拳の推手における稽古において、相手に投げられること、負かされることに対して抵抗しない、平気でいられるようになることと書いてあるのだけど、これはそのほかの学習や訓練、成長全般に転用できる考え方のような気がしていて、恥をかいたり、評価されなかったり、バカにされることを避けていては成長することはできないということなのかなと思いました。

そしてこの本にはビジネスなどの日常的に競争が繰り返される分野で、こうした考えをどう活かせばいいのかについての意見も書かれています。

しかし、こういった考え方を日常生活に当てはめるにはどうしたらいいだろう。日常的に競争が繰り返される分野(たとえばビジネスなど)で、数週間だけパフォーマンスにこだわらなくてもいい期間を設けても大丈夫だなんてことはほとんどない。また、本当のビギナーであれば、ビギナーズ・マインドを持つことや、喜んで負の投資を行うことも簡単かもしれないが、人々の視線と期待を一身に浴びながらパフォーマンスする立場にいる者にとっては、恥をかいても一切気にすることのないオープンな心を保って学ぶのは容易ではない。実際、僕自身もあの映画が公開されて以来、これと同じ大きな問題を抱えていた。負の投資をするだけの心の余裕を持てなかったのだ。

僕の答えはこうだ。心をオープンにした増大理論の学習アプローチをとり、ピーク状態でパフォーマンスできない期間を時に許容することは、学習の過程に絶対に必要である。この時、ベストを目指すためにはこれが必要なのだと世間にわかってもらおうと期待するのではなく、その責任を自分自身で背負うこと。

周囲や世間は一時的にパフォーマンスが落ちたり、成果が出なくなれば当然評価を下げたり非難したりバカにしたりするが、それを自分でうけとめてそれでもなおより高いパフォーマンスを目指した学習をすることが必要だということなのかな〜と思ったりしました。

ただ、これに似たような話は「弱さを見せ合える組織が何故強いのか」というロバート・キーガンの書籍で語られているのではないかと思っていて、特に組織のトップ層に位置する人たちが、意識的に弱さ(というよりも改善の余地のある側面)を見せ、それを乗り越える姿を見せることで、組織全体が成長・発達に向かう傾向があるというようなことが書かれています。

もちろん成長のためにパフォーマンスが落ちる時期を周囲に許容させようというのではないのだけれども、そういった弱い時期を乗り越えることで高みに到達するケースやストーリーを組織の文化に刷り込んでいくことで、そういった負の投資をしやすい環境を作ることはある程度可能なのではないかと思うのです。

ゾーンやリカバリーに関する話

負の投資の話以外にも、色々な話がこの本には書いてありました。

ゾーン

ゾーンというのは、集中力が非常に高まった状態、感覚が研ぎ澄まされた状態と書いてあったのですが、「感覚が研ぎ澄まされた結果、時間がゆっくりと進んでいるように感じる」というようなことが書いてあり、有名な「ボールが止まって見えた」という話と似ているなあと思いました。

こういった話を、この本ではチェスという頭脳競技と、太極拳という身体競技両方に共通するものとして書いてあるところが面白かったです。

また、ジョッシュがアメフトの選手と、チェスとアメフトのトッププレイヤーの心理面に共通点があるという話で盛り上がったというくだりがとても興味深かったです。

リカバリ

ストレス・アンド・リカバリーというコンセプトがあるらしく、

LGEの心理学者グループは、ほとんど全ての競技や分野において、一流パフォーマーは、リカバリーするための何らかのルーティーンを行なっているという特徴を発見している。とても重大な試合で生き残れる選手の大半は、プレーとプレーの間の短い隙間にリラックスできる選手なのだという。

と書かれていました。

これはなんとなくビジネスでも言える気がします。瞬間的にパフォーマンスを高める方法は色々あっても(ハードワークとか)、高パフォーマンスを維持し続ける人はやっぱり切り替えとかリカバリーが上手な印象があります。

そういえば自分も息抜きがうまくできない時期は何をやってもうまくいかなかったなあ・・・

おわり