テキトウ組織論・KYチーム開発

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OKRに関する『混ぜるな危険』

OKRと混ぜると危険なコト、モノ

個人的な見解ではあるものの、「OKRと混ぜると危険」な制度、仕組み、文化、などがあると思っていて、簡単にまとめてみようと思った。

ちなみにソースは色々な書籍などの情報と、私がここ1年くらいOKRを運用してみた経験を合わせたもの。

混ぜるな危険リスト

早速リスト。順番に意図はありません。

  • 15人を超える組織での導入
  • トップダウン、モノローグ
  • コンピテンシー評価
  • 指摘的なフィードバック
  • 労働集約型ビジネスモデル、業務効率化
  • 雑談を許さない文化
  • 階層的組織構造

それぞれ軽く理由を書いていきます。

15人を超える組織での導入

15人超の組織で1つのOKRを設定するだけだと、効果が発揮され切らないのではないかという仮説です。

これは「サピエンス全史」か何かで「組織が15人を超えると、対立が生まれる傾向がある」と書かれていたこと、「TRUST FACTOR」に「チーム人数が6〜12人を超えると、生産性が横ばいになる傾向がある」と書かれていたことに由来します。

参考:TRUST FACTOR

また、OKRは基本的に『戦略について意見が分かれやすい、不確定性の高い環境で効力を発揮する』という傾向があり、そのような環境で全員でOKR策定ワークをし、お互いの視点、意見を相互理解することでチームのベクトルを合わせるというのが1つ大きな特徴だと思っています。

ただ、限られた時間の中で大人数でOKR策定ワークをすると、意見を十分に吐き出しきれないとか、自分の意見を聞いてもらえていないと感じるメンバーがでる可能性が高まるかなと。

そうすると、OKRの効果が阻害されてしまうと思うわけです。

少人数(できれば12人以下)のチームに分けてそれぞれOKRを作るとか、通常よりも時間をかけてOKR策定ワークをするとかすれば、問題ないのかもしれません。

トップダウン、モノローグ

前述の通り、OKRはお互いの視点や意見を相互理解することがキモなので、それに反するような、トップダウンの文化、モノローグ(一方方向のコミュニケーション)の文化とは相性が悪そうです。

そもそも、トップダウンで戦略を提示できるような業務環境であるならば、OKRよりもKPIマネジメントやMBO(Management By Objective)などの手法の方がフィットしそうです。それぞれの目標管理手法にはそれぞれメリデメがあると思うので、別にそれでうまくいくなら無理にOKRを使う理由もないと思います。

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは、ある職務において突出した成果を見せる人々の特徴的行動、特性を文章化したものです。

参考:コンピテンシー・マネジメントの展開(完訳版)

つまり『こういう行動をしていれば成果につながるはずだから、そういう行動を取ったら評価します』というようなものです。

OKRでムーンショットを狙うような環境では、どういう行動が成果につながるかはまだ定義し切れていないはずです。これを同時に運用しようと思うととても難易度が高いのではないでしょうか。

仮にコンピテンシーで定義された行動と、ムーンショットを生む行動が相反する行動だった場合、メンバーが積極的にムーンショットに向けた行動を取れなくなる要因になってしまうかもしれません。

OKR導入するチーム、メンバー、PJにおいてはコンピテンシーに限らない評価をするとか、たとえ失敗しても挑戦を評価するというメッセージを伝えておくとか、対応策はいろいろ考えられそうではあります。

指摘的なフィードバック

「ここを伸ばせば成果につながる」という指摘的なフィードバックは、コンピテンシーと同じく、どういう行動が成果につながるか定義されていないとしづらいはずですが、フィードバックというとどうしても「ここを伸ばしましょう」と言いたくなってしまうのではないでしょうか

フィードバックと成果に関連性を感じられればいいですが、不確定性の高い環境下では、そうもいかない場面も多いと思います。

OKRには、個々人の強みを重ね合わせてムーンショットを狙うアプローチの方がフィットすると思われるので、指摘的なフィードバックはOKRの効果を阻害してしまう危険性があると思います。

参考:人事評価はもういらない 成果主義人事の限界

この辺りの本にも、「1on1では指摘よりポジティブフィードバック」「リフレクション(内省)とフィードバックが大事、自分で気づかなければ改善はされない」といったことが書いてあります。うまい具合のフィードバックができれば、それはOKRともフィットするのだと思います。

労働集約型ビジネスモデル、業務効率化

労働集約型ビジネスモデルを否定するわけではないです。

それが適するビジネス環境はあると思います。

ですが、労働集約型ビジネスモデルでは、定義された業務の効率化が業績アップにつながるはずです。

OKRは策定ワークにも時間をかけますし、日常的な運用でも、チェックインMTGやウィンセッションなどに時間が割かれます。

例えばそれらに時間をかけるよりも、より多くのアポを取った方が業績につながるとか、そもそも通常業務で業務時間が埋まっているから業務効率化したいとかいった環境下で、OKR運用のための時間を捻出しようと言っても、「理想は分かるが現実は…」という反発も生みかねないのではないでしょうか。

そういった環境下では、おそらくOKR以外の目標管理制度の方がフィットするのではないかと思います。

雑談を許さない文化

OKRはGoogleが活用し成果をあげたことで広まりました。Googleはre:Workにてチームについてもガイドを公開していますが、そこには「心理的安全性」が重要であると書かれています。

rework.withgoogle.com

「雑談を許さない文化」というのは「心理的安全性の低い文化」というような意味で書いています。心理的安全性を高めるために、雑談が効果を発揮すると考えているからです。雑談の効能としてはいくつか持論があり

  • チームメンバーとの相互理解が深まる
  • 心にゆとりができる
  • 委任、委譲されている感覚をうむ

といった感じです。

雑談から、チームメンバーがどんなことを考えている、何が好き、どんな悩みがある、などを知れるだけでなく、雑談からの流れで業務に関する相談やコラボレーションが生まれることも多々あります(これは私のチームで実際に起こっています)

雑談をするくらいの時間的ゆとりがあると、心にもゆとりができ、健全なマインドで仕事に臨めます。

雑談くらいの自由も許されないというのは、事細かに管理されている、マイクロマネジメントされているという印象をメンバーに与えると思います。そうなると委任されている、委譲されているという感覚はもてないので、自分が信頼されていないと感じるのではないでしょうか。そういった環境ではパフォーマンスが上がらなくても不思議ではありません。

ちなみに雑談に関しては会社のブログで

tech.speee.jp

こんな記事を書いたことがあります。

階層的組織構造

OKR運用、特にOKR策定の段階において、メンバー全員のベクトルを合わせることが重要になってきます。要は「自分も作成に参加したOKRだから、納得している」という状態をいかに作るかが大事ということです。そもそも不確定性が高く、戦略の方向性に関してバラツキが出がちな状況においてチームのベクトルを揃え、協力協働してムーンショットを目指すというのがOKRのキモであるはずなので、納得度が低いOKRでは全力を傾けられなくなっても不思議ではないと思います。(ちなみに自チームではOKRの納得度アンケートなどを実施してチェックしていたりします)

そうした背景を考えたときに、階層的組織構造は足かせになってしまう可能性があると思います。

階層的な組織構造においては、どうしても上層にいるメンバーの発言権が大きくなったり、意見が対立した際に無意識に上層メンバーの意見に寄ってしまったりということが起きてしまうのではないでしょうか。そうすると、その場では納得したように見えても内心では「上層メンバーが決めたもの」という意識が抜けず、困難な場面で踏ん張りが効かなくなるといったことも起こってしまうかもしれません。

とはいえ組織運営上、ある程度の階層構造はどんな組織にもあると思うので、OKRを導入するチームやPJでは工夫が必要になってくるのではないかと考えています。例えば上述の「雑談」を通じてフラットな雰囲気を作るとか、OKR策定ワークのファシリテーションを工夫して、メンバーが意見を出しやすいようにするとかです。

終わりに

簡単にといっておいて結構なボリュームになってしまいましたが、OKR運用はやっぱり一筋縄ではいかないというか、最低限これくらいは意識しながら運用しないといけないんだろうなと思いながら日々仕事しています。

皆さんはOKRどんな風に運用していますか?成功事例があったらたくさん聞きたいです。

おわり